「マフラーしてるから」

「あ、これは」

「やっぱ雨に長時間あたるのはよくねぇなー」

「違うんです。これ、章くんに貰ったプレゼントで」

「………」


風邪を引いたと思われたままじゃ、きっとまた余計な心配をかける。

だから私はすぐに事情を説明した。


「……あー、誕生日プレゼント?」

「はい」

「“章くん”から?」

「はい……」

「ふーん。よかったじゃん」

「…………はい」


「よかったじゃん」って言われると、返す言葉がわからない。

先輩にとっては「よかった」ことなんだって、落ち込んじゃう。


なにも返せなくて黙っていたら、「じゃあ、俺行くわ」って、先輩は歩き出して行ってしまった。


残された場所で、小さなため息が出る。


わかってるけど。

片想いなのは、わかってるけど。


私の気持ちに気づいてるはずなのに、「よかったじゃん」なんて……言われたくなかったな。