「ごめんな、さ……」
「……」
拭っても出てくる涙をまた拭って、最後にぐっと飲み込んだ。
頭の中を空っぽにして、体の空気を入れ替えるように新しい空気を吸い込んでいく。
「……行ける?」
「大丈夫です」
なにも聞かれなかった。
「どうしたの?」とか、「なんかあった?」とか。
また、線を引かれたのかもしれない。
でも今は、これでいい。
聞かれたら、きっと我慢できないから。
目が真っ赤になっちゃうくらい、続きの涙が止まらなくなるから。
だから今は、線を引かれてよかった……
歩き出す私の隣を、自転車を押す瞬先輩が一緒に歩く。
11月の冷たい風は涙を乾かしてくれるけど、胸の痛みまでは連れ去ってくれない。
私の毎日は、いつ音を立てて崩れるんだろう……


