11月9日、誕生日の朝。
そして、討論会の朝。
土曜日だけど制服を着て、夜に着る分の服を鞄に詰める。
何度も何度も鏡の前でチェックして、おかしなところがないか見回した服。
「よし、完璧!」
荷物を鞄に詰め終わり、部屋を出て階段を下りていく。
玄関で靴を履いたら、靴紐が解け掛かっているのに気づいて結び直した。
ガチャ
「…?」
座り込む私の目の前で、ドアが開いた。
「あら、どこ行くの?」
「、…」
え、お母さん……今、帰ってきたの?
今、朝だけど……
「学校、……今日、泊りで討論会が」
「え、じゃあ今日は帰ってこないの?」
「うん……」
お母さんの顔が、嬉しそうに明るくなった。
「ねぇ、今日娘帰ってこないみたいだから泊まってくー?」
振り向いて話しかけた先には……男の人が立っている。
「っ……行ってきます」
視界に入れないように俯きながら走りだす。
家が見えなくなるまで、全速力で猛ダッシュ。
ザワザワと、胸の中が荒れている。
ギュウギュウって、締め付けられるように痛い。
走っても走っても、現実からは逃げられないのに。
お母さんとあのおじさんは、あの家でって……
だからお父さんはって……
考えるだけで、痛くて死にそう……
ねぇ……お父さん、お母さん。
私今日、誕生日だよ……


