「よし、んじゃ俺帰るけど」
「はい、…あの、本当にありがとうございました」
「うん、後でLIMEするわ」
「え」
「あ、西沢さんに連絡、忘れんなよ」
「はい…」
「じゃーね」って言いながら、先輩の足はペダルを漕ぎ出す。
遠くなっていくグレーの背中が、暗い道のせいですぐに見えなくなってしまって。
見えもしない姿がなんだか無性に悲しくて、ため息が出た。
「はぁ……」
玄関に向かう足音が、トボトボとひどく悲しく聞こえる。
帰ったって、一人ぼっち。
帰る意味すら、わかんない家……
「鍵……」
鞄を漁って鍵を探す。
チャラチャラと音はするのに、鞄の中から見つからない。
「あった」
やっと見つかった鍵を、鞄から取り出したときだった。
すぐ後ろから聞こえたのは、さっき聞いたばかりの自転車のブレーキの音。
「七瀬!」
「……え」


