「家、この辺?」
家まであと、ほんの少し。
非日常が日常に戻るまで、もう、ほんとにあと少し。
「あ、そこです、外灯の下の」
「ここ?」
「はい」
着いちゃった。
誰もいない日常の家に、着いちゃった。
「無事とうちゃーく」
キューっとブレーキがかかった自転車が、音を立てて家の前でピタリと止まった。
それを確認して、すぐに自転車から降りる。
「ありがとうございました」
「いえいえ」
自転車に座りっぱなしだったお尻が、少し痛い。
けどなんか、そんなことよりも……
なんでだろう……私、なんでか泣きそう。
胸が痛くて、泣きそうだ……
「色々、今日はすみませんでした」
「いいって、それより親まだ帰ってこないんでしょ?」
「……はい」
「連絡は?取れるの?」
「………」
「取れない、の?」
「取れる、時と……取れない時が」
「………」
「、」
かわいそうな子、決定。
もう、なんか……私、すごい哀れな子って思われてるんだろうな。
「じゃあもしまた具合悪くなって親と連絡取れなかったら、俺に連絡してきていいから。とにかく具合悪いの我慢だけはすんなよ?」
「……はい」


