「あの、瞬先輩……」
「んー?」
私の髪が揺れるのと一緒に、先輩の髪も揺れている。
いつもの学校じゃなくて、いつもの明るい空じゃなくて……
こんな場所でこんな時間に、同じ景色を見ている。
それがこんなに特別だって感じるの、初めてだ。
「なに?」
赤に変わった信号に自転車を止めたあと、瞬先輩が私のほうに振り向いた。
「なに?」その返答をしようと思うんだけど……
「、…」
「ん?」
「なんでもない、です」
「え、呼ばれただけ?なんだよそれ」
「すいません」って、私も一緒に笑うけど。
でも、違う。
ほんとはなんでもなくない。
本当は、聞きたかった。
「先輩のこと、好きになったら困りますか?」って。
「彼女がいるからダメですか?」って。
本当は、聞きたかったけど。
でも、もう……
ダメってわかってても、思っちゃう。
もっと一緒にいたいから、信号、1つでも多く赤になれって。
こんな風に一緒に帰れるなら、風邪なんて治らなくてもいいって。
このまま道を間違えて、迷子になっちゃえばいいのにって……
「……っ」
ねぇ私、恋の仕方もわからないけど……
でも、私。どうしよう……
どうしよう。
瞬先輩が……
すごく好き。


