校舎の前の、通学路。
少しだけ振り返ってみたら、学校がどんどん小さくなっていくのが見えた。
学校は、日常のはずなのに。
自転車から振り返り見る学校も、目の前にあるグレーの背中も、
今は全てが、非日常みたい……
「、…」
どうしよう、陽は沈んだはずなのに。
見える景色は薄暗いはずなのに。
それなのに……全部がキラキラして見える。
どうしよう、風邪を引いているはずなのに。
あんなにしんどかったのに。
今は全然、辛くない……
ねぇどうしよう……私、
私今、すごく嬉しい……
「あ、悪い」
先輩が少し振り向いて謝ったのは、小さな段差にガタン!って自転車が跳ねたから。
私、気づいてた。
さっきから振動が少ないのは、先輩がなるべく段差を避けてくれてるからだってこと。
「ごめん、痛かった?」
「大丈夫です」
「って、そう言うしかないよな」
「いえ、あの、ほんとに」
「うん、ごめんごめん」
前を向いている先輩の顔は見えないのに、どうしてかな。
先輩が今、優しい顔で笑ってるのが私にはわかる。


