「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。

ルルーシュ視点

腕の中にいるセイレーンを見る。

気を失っている彼女の手は縋るように俺のシャツを握っていた。目じりからは涙が零れる。

彼女の存在を確かめるように抱きしめる腕に力を込めた。

加減を間違えれば折れてしまいそうなほど華奢な彼女。

その後ろでは数人の男が取り押さえられていた。

早くこの場から立ち去ろう。でなければ怒りで彼らを殺してしまうから。

本当は直ぐにでも「殺してくれ」と懇願するまで痛めつけてから殺したいけどまだ駄目だ。彼は証人として生きてもらわないといけない。

「マジでうぜぇな」

彼の雇い主は分かっている。

セイレーンの義妹だ。

俺のことを運命の番だと言って馴れ馴れしくしてくる。

腕に抱き着いて胸を押し付けて来た時には危うく、顔面を殴りそうになった。隣にセイレーンがいたからできなかったけど。

だってセイレーンには俺の本性を知られたくないから。

彼女を抱きかかえながら俺は馬車に乗り込む。

ちゅっ、ちゅっと気持ちを落ち着かせるために彼女の顔にキスをする。

「セイレーン、来るのが遅れてごめんね」

あの義妹の計画を知った時、どれほど腸が煮えくり返ったか。

大切なセイレーンを捉えようとした男のその汚らしい腕は切り捨てた後に後ろに蹴り飛ばした。

蹴り飛ばしてすぐにセイレーンを抱きしめたから彼女には見られていない。

「そう言えば義妹以外にもうざいのがいたな」

獣人の下級貴族もこの件に加担している。

番至上主義の彼らは俺とあの汚らしい女がくっつくのは当たり前だと考えている。運命に翻弄される哀れな生き物だ。

侯爵家と伯爵家の婚約に口を出すとか何様のつもりなのだろうか。

「セイレーン、君を苦しめる全ての害悪は俺が取り除くからね。君はただ俺に愛されて幸せに笑っていればいいんだよ」

柔らかな頬を撫でる。

愛しい、愛しい、俺の大切な、俺だけのセイレーン。君を傷つける者は許さない。何者であろうとも。