「セイレーン、ミアが迷惑をかけてすまない」

ミアが学校を飛び出していくのが窓から見えた。

彼女は何かと目立つのですぐに誰かの目に止まる。

朝から面倒だったなと物思いにふけっていると教室にいた誰かが「ウェルツナー子爵令嬢だ」と言ったので目を窓の外に向けると走り去って行く彼女の後ろ姿が見えた。

授業をサボるなんて不真面目な生徒だなと思っていたらディアモンが来た。

迷惑をかけたと思うのならそっとしておいて欲しい。

あまり注目されたくないのに、彼らが来るだけですぐに私はみんなの話題に乗るのだ。

悪目立ちしてる。

そろそろ父が何か言ってくるかもしれないと身構えている。

私に対して関心はない人だけどさすがに家に泥を塗るようなことをしたら叱られるだろうとは思う。

「お気になさらないでください。ジュノン様も大変ですね。貴族令嬢として未発達な人が婚約者だなんて」

伯爵令嬢である私が侯爵家であるディアモンに頭を下げられたら許す以外の選択肢がない。

彼はそれを分かった上で謝って来ているのだろうか。

「ウェルツナー子爵令嬢が先程、学校から出ていくのが見えましたが、追わなくてよろしいんですか?」

「ああ。少し一人になって頭を冷やす必要があるだろう」

ディアモンはそう言うけど底辺の評価しかないミアが授業をサボれば彼女の評価は更に急降下。もうマイナスだろう。

それに成績もあまり良くないと聞く。

授業態度も真面目とは程遠い。

それに加えてサボりまで追加されたら留年するんじゃないのかしら?

まぁ私には関係ないけど。

彼女が何かやらかしてもそれは彼女と婚約者であるディアモンの責任だ。

「セイレーン、俺は・・・・いや、なんでもない」

ディアモンは教室を出ていった。

運命の相手に出会えた男の顔ではないな。ミアも決して幸せとは言いがたかった。

必死にディアモンを繋ぎ止めようとしているみたいに見えた。

私の存在がただ単に気に入らないというのもあっただろう。

肝心のディアモンは物言いたげに時おりこちらに視線を送ってくることがあった。

ミアに絡まれたくないし、これ以上おかしな噂を立てられたくなかったので声をかけられなければ無視をしていた。

ただディアモンが私を見ていることは当然周りも気づいていた。

そのせいでディアモンは私に未練があるんじゃないか、またよりを戻すんじゃないかと影で言われるようになった。

本当に、迷惑な話だ。ディアモンとの婚約なんて二度とごめんである