「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。

???視点

俺は森の中に置き去りにした女の様子を見に来た。

女は死体で見つかった。

生きながらに獣に食い漁られたのだ。

そうなるように獣を操っていたのは他でもない俺だ。

俺には生き物の感情を操る力がある。これは誰も知らない。知られたが最後、危険視されて良くて投獄。最悪、処刑されるだろう。

「馬鹿な女。番の男だけで満足していたら良かったのに」

この女がセイレーンからディアモンを引き剥がしてくれたことには感謝してる。他国に留学している間にセイレーンがあの馬鹿と婚約をしていた。

どうやってあの馬鹿を使い物にならなくしてやろうか。

セイレーンが傷つかない方法での婚約破棄が望ましい。

構想を練っている時に婚約破棄はなされた。最悪な形で。

セイレーンを傷つけた報復はするつもりだった。

だけど殺すつもりはなかった。森に捨てたゴミには本当に感謝していたから。でもこのゴミはその穢れた触手をセイレーンにまで伸ばしてきた。

なら、生かす理由はないよね。



◇◇◇



俺の名前はルルーシュ・レドモンド。

侯爵家の人間だ。

だが少し特殊になる。なぜなら俺の父はレドモンド侯爵ではないから。

まだ母が使用人や平民と不貞を働いた結果なら良かった。

そう思うのは俺の父がこの国の王だからだ。そのせいで俺は幼い頃から王妃に命を狙われたり、政治に利用しようとする馬鹿な輩に祭り上げられかけたりする。

うるさい連中を全員、殺してやろうかと思ったことが幾度もある。

でもそこまでしてやるのも手間で結局放置した。どうでも良かった。誰がどうなろうが。自分自身さえも。

出自のせいかどこに行っても疎まれ、誰からも必要されなかった。それが当たり前だった。

だけど、彼女だけは俺を認めてくれた。そこにいていいと言ってくれた。

彼女だけが俺を見てくれた。

そして初めて俺は『ルルーシュ・レドモンド』という一人の人間になった。

誰かに認めてもらえることがこんなにも嬉しいことだとは思わなかった。

セイレーンと出会ったあの日から俺の世界は色づいた。

「残る害虫は後一匹」

ディアモン・ジュノン。

セイレーンと婚約で来た幸せを噛み締めて大人しくしていたらもう少し彼の未来は続いたかもしれないのに。本当に愚かな犬だ。

「セイレーン、君を傷つけるもの、君を悲しませるもの、君を俺から奪う者。俺はその全てを許さない。その全てから君を守ろう」