やわらかな檻

 愚痴には思えなかった。

 話を聞いてもじんわりと愛情が伝わってくるだけで、聞かされて嫌だと思う気持ちが全く出てこない。

 折角来て下さったのに渡せなくて申し訳ないけれど……それは私が勝手に思っているだけだから、小母さまが気に病むことではないはずだ。


「お気になさらないで下さい。宜しければまた来年、お越し下されば嬉しいです」

「ふふ、小夜さんは良い子ね。――それじゃあ、ごきげんよう」

「ごきげんよう」


 遠ざかっていく後姿を見ながら約束を思い出した。

 もし今日、シオンの花束を持って帰らなければ慧は私を責めるだろう。

 忘れたと嘘をついても見透かされそうだ、だいたいどこに盗聴器が仕掛けられているか分からないのだし。

 お仕置きは覚悟しなければいけない。


 ――でも、その子は昔の慧に似ている。