やわらかな檻

　それは、紫苑の生徒としてさすが？
　それとも他の何かとして？

　私の考えすぎかもしれないが、言葉の端々に引っかかる。


　ついでに言えば初日に売り切れで問い合わせがあった場合、取り置きするのはマニュアル通りの行動だから褒め言葉は素直に受け取れない。

　はあ、と曖昧に返事しただけだった。

　小母さまは考えるように口元に片手を添え、そして頭を左右に動かす。


「……遠慮しておくわ。実は今日の夜にはアメリカに帰らなきゃいけないの。毎年渡してたんだけど、今年は無理そうね」

「プレゼントだったんですか？」

「親戚に、すごく病弱な子がいてね。紫苑の生徒よ。
ただ出席日数ギリギリでいつも家で静養していて、その子を励ますためにシオンの花を頼まれていたの。元気になれば学校に行けるって、毎年」