「なら、私も逃がしてよ」
「駄目です」


 柔らかく微笑んで言われたその言葉自体には、全く拘束性はない。

 けれども経験上、分かる。

 襖越しに感じる、微かな息遣い。その気配。

 私をこの離れに閉じ込め、拘束するためだけに雇われた何人もの人間。


 これを開けた所で、すぐさま私は捕まってしまうだろう。