やわらかな檻

 無意識に、爪の跡がつくほど拳を握り締めていた。


「馨に彼の、何が分かるというの。……だから私は」



 ずっと、彼の傍に。 




「はい、ストーップっ!」


 軽やかで明るい声が間に入った。

 高い位置で結ばれた二つ結びがぴょこんと揺れ、赤い髪飾りが視界の隅を掠める。


 私の前で大きく手を振り下ろし、私が言おうとしたそれを止めさせた少女は、今度は私に体を向けた。