やわらかな檻

 確かに、その蝶結びが緩くなっていた。
 少し引っ張ればすぐさまほどけてしまうだろう。


「本当。……ありがとう」
「待って、結び直すから」


 私の返事を聞く前に、六条はくるくると紐で私の髪を結い上げる。

 途中で迷う様子もなく、随分と手際が良い。

 最後にきつく締め付けられる感じがして、私はその行為が終わったことを知った。


「終わり」
「ありがとう。――慣れてたね」
「どういたしまして」


 六条は何かを思い出すかのように、柔らかく目元を緩めた。