◇
茶道で使う扇子が近くにあったから、ノッてくれることを期待して言ってみた。
「匠、お主も悪よのぅ」
「……貴女ほどではないと思うよ」
疲労を隠さずに恨みがましげな目を向けてくる、血の繋がらない甥……兄弟の兄の方からフッと視線を外す。
十年以上頼ってきたくせに生意気よ。
誰のために毎年シオンの花を買いに行ってると思ってるのかしら。
開けっ放しにしている襖からさりげなく廊下の様子を覗くと、タイミングよく小夜さんが新月の間に入っていくところだった。
こっちは気付かれてないみたい。
「連絡不足なのがいけなかったんだわ。私のせいじゃないもの」
茶道で使う扇子が近くにあったから、ノッてくれることを期待して言ってみた。
「匠、お主も悪よのぅ」
「……貴女ほどではないと思うよ」
疲労を隠さずに恨みがましげな目を向けてくる、血の繋がらない甥……兄弟の兄の方からフッと視線を外す。
十年以上頼ってきたくせに生意気よ。
誰のために毎年シオンの花を買いに行ってると思ってるのかしら。
開けっ放しにしている襖からさりげなく廊下の様子を覗くと、タイミングよく小夜さんが新月の間に入っていくところだった。
こっちは気付かれてないみたい。
「連絡不足なのがいけなかったんだわ。私のせいじゃないもの」

