やわらかな檻

 怒らないかどうか、時間をかけてゆっくり慧の膝から退いていった。


「お仕置きは何にしましょうか。
とりあえず稽古の時間を二倍に増やして……ああ、それから新月の間に置いてある花瓶を持ってきて下さい。

夕方頃に生けたのですが、もう少し眺めたいと兄に取られてしまってね」

 え?

「それだけで良いの? シオンの花は?」


 少し拍子抜けする。半日ずっと正座とか、屋敷を一人で掃除するとかもっと過酷なお仕置きかと思っていた。

 ……それに、シオンの花束はもう要らないのだろうか。

 学園祭ならまだ明日もあるのに。

「ええ、それだけで」

 びっくり箱でも待っているのかもしれない。

 半信半疑で母屋に行き、言われた通り新月の間の襖を開ける。


 中にあったのは、びっくり箱以上のものだった。