やわらかな檻

 言葉の中にからかうような響き。

 ほらやっぱり、慧は何をされても甘受するしかない私を責めて楽しんでいる。

 ううん、妙に機嫌が良い? まさか。


「先方にも事情があったのよ」

 ただその事情は聞かれても頑として一切話していない。

 境遇が昔の慧と似ていて、どうしても見過ごせなくて渡したなんて口が裂けても言うものか。


「事情があるのはこちらも同じではないですか。先に予約しておいた分こちらが先です」

「それは、ごめんなさい」


 こちらに全面的に非があるのだから、謝って許して貰うのを待つしかなかった。

 俯き黙っていると背後で大きく溜息をつかれ、体を固定していた腕がゆるゆると解かれていく。