「ごめんなさい」
謝るのは、慧に花束を持って帰らなかったことだけだ。
「謝って済む問題ではないでしょう?」
「……でも、それしか言えないわ」
いつも通りに慧が抹茶色のソファに座り、制服の私が膝の上に座る格好は居心地もバランスも悪くて仕方なかった。
臍の下を周る両腕を支えにし、もぞもぞ動いて体ごと振り返ろうと――あわよくば膝から降りようとしたがダメで。
より強い力で押さえられ、慧の表情は見えない。
「その通りですね。
外出禁止令を解かれずせめてもの気持ちで貴女の売る花を所望したというのに、このような酷い仕打ちにあうとは思っていませんでした」

