君の音に近づきたい


その日の放課後、早速、文化祭実行委員から呼び出された。
その場所は第一音楽室だった。クラスの教室の二倍ほどの広さがある。
行ってみれば、オーディションの審査員をしていたのと同じ人たちがそこにいた。

「――まずは、オーディション合格おめでとう」

文化祭実行委員長の3年生が、笑顔で私に告げた。

「ありがとうございます……っ!」

「君が選ばれた理由は、何より、その雰囲気だ。テクニックだけなら他にも上手な子はいくらでもいたんだけどね。ステージは文化祭だ。何より、音楽を楽しめる人を選びたかったんだ。それが出来る人なら、どんなタイプの曲を演奏しようが、その雰囲気を最大限に表現できる。そんな視点で選ばせてもらったよ――」

そう説明してくれているところに、音楽室の扉が開く音がした。

「――遅くなって悪い」

「ああ、待ってたぞ」

現れたのは、二宮さんだった。