綺麗な茶褐色の目がじっと私を捕らえている。
白いシャツ姿にワインレッドのネクタイが鮮やかで。その目が間近に迫る。男の子とこんな風に接近したことがなくて、心臓がドキドキするーー。
違う。そうじゃなくて!
ここは、ちゃんと謝って――。
「――あんたみたいな女、虫唾が走るな。何のためにこんなところまで来てんの? ああ――」
酷く冷たい声と、嘲るような冷たい笑みが突き刺さる。
「テレビや雑誌でしか見られない”笑顔の貴公子”に少しでもお近づきになるため? まあ、そんなとこだろ。でなきゃ、こんな風に人の練習中に窓にへばりついたりしないよな」
「ちが――っ」
上手く唇が動いてくれない。
私は二宮さんを”笑顔の貴公子”だなんて思ってない。ただのファンになったつもりもない。
違うと言いたいのに。
でも、どうやって違うことを説明できる――?
言葉にしても、きっと二宮さんの言っている意味と同じになってしまう気がする。
「何が違うんだよ」
「私は――」
「悪いけど。学校では”笑顔の貴公子”やってないんだ。残念でした」
そう吐き捨てると、二宮さんはすっと立ち上がりドアノブに手を掛けた。
ドアの向こうに身体半分を踏み入れたところで、もう一度私に顔を向ける。
「ホント、やめてね。のぞかれるの、好きじゃないんだ」
ダメ押しのようにそう言ってそのまま練習室に消えて行くのを見ていたら、何かを考える前にその扉に咄嗟に手を掛けていた。



