君の音に近づきたい



眩しすぎるほどのスポットライトで、思わず目をつぶる。
それと同時に、悲鳴のような歓声が上がった。


「きゃーっ、奏君!」


まさに、アイドルのコンサート会場のようだ。
すぐそばにいるこの人が、本当に凄い人なのだと思い知らされる。
こうして舞台の上で間近に見つめれば、他の人にはない圧倒的な華やかさとオーラが一瞬にして会場を覆い尽すのが分かる。
学校の生徒だけでは、この客席は埋められない。
二宮奏を見たくて集まって来た人たちだ。

スタインウエイのグランドピアノの前で、二人並び礼をする。

ひっきりなしに続く黄色い歓声を前に、怖気づきそうになる。
でも、ぎゅっと手のひらを握りしめる。

絶対、大丈夫――。

鍵盤の前に並ぶ椅子に腰掛けた。


視線を合わせる。一緒に息を吸って合図にする。
一曲目はエルガーの愛の挨拶。

セコンドの二宮さんの伴奏から始まる。あれだけ歓声で充満していた会場が静寂に包まれる。
広く天井の高い講堂に、二宮さんの音が放たれた。

この音――。

主旋律を待ち受けるような音とリズム。それが、私の胸の奥の何かを刺激した。

優しく、そして心の通った音。

そこに私が主旋律を載せる。白と黒の鍵盤に並ぶ、四本の手。
今、確かに、私と二宮さんとで音楽を奏でている。

柔らかく包み込むような二宮さんのピアノに、私は自分を委ねるように音を紡いでいく。
狭い練習室から飛び出して、広いホールに響き渡らせることが出来て、音たちも喜んでいるみたいだ。

すぐ隣に二宮さんがいる。ラストに向けて、視線を合わせる。
最後の一音を出来るだけ遠くへと放つ。

すぐに、拍手が沸き起こった。

二人で立ち上がり、礼をする。

上手く出来たーーその安心感から、思わず笑みがこぼれた。


「奏君、ステキ!」


黄色い歓声と拍手が続く中、一度舞台袖へと下がる。