オレが歩美の腕を掴むと、歩美はおそるおそるオレと視線を合わせた。




「お前…昨日泣いた?」

「…っ」




慌てて首を振る歩美。

オレが掴む手を緩めると、すぐにあっちを向いて流し台の方へ行ってしまう。



また喉のあたりでざわめく感じ。

これは泣いたかもしれない歩美に、腹が立っているということなのだろうか。



いや…違う気もする。




なぜって…



オレは今、一瞬歩美を抱き寄せようとしていた。