それから歩美はすぐに流し台の方へ走っていって、戸棚からカップを二つ取り出した。 「オレいらないから」 「……」 オレがすかさずそう言うと、振り返りながら歩美の動きが止まる。 オレは歩美の手に握られた二つのカップに目をやった。 薄いオレンジとブルーのカップ。 もしかして オレとのために揃えてた? いや、ただ来客用に二つくらいは用意してあったのかもしれない。 でも歩美のしゅんとした顔見てたら あぁ、やっぱりオレ用だったんだなって納得した。