呼ばれて振り向くといつからいたのか掃除道具入れと壁との微妙な隙間にすっぽりとはまりこんでいる
「馬矢くん、なにしてんの」
「寅川さんこそ」
あ、出てきた。
真っ黒な馬矢くんの髪が茜色に照らされて茶色ぽくなる。
奇人変人馬矢直広。容姿と頭だけはいい。
「関係ないでしょ」
あんたにつき合ってる暇は無いんだよ。
「僕は夕日を見に」
「あっそじゃあもういいじゃん ばいばい」
こいつとはたった2ヶ月の付き合いで、同じクラスになったのに2~3度しか会話したことがない。
のりがよくわからん。
っていうか、
たった2ヶ月しか、たって無いのかぁ。
レベルは中くらいだけど、頑張って、勉強して、この学校に通って。高校生、になったのに。
別に毎日すごく楽しかった訳じゃないけど。勉強だってそんなに好きじゃないし。
クラスにそこまで親しい友達だっていないし、まだ、
「あーあ」
こんなのってない。
私は明日宇宙に行きます。2週間前から交信の途絶えた6番目の地球都市の調査をするためです。私の体は宇宙に出るのにはもってこいの超適性体らしいです。宇宙に出ると遺伝子の命令で体質が変わって云々、宇宙服を着なくてもまるで地上で生活するように、宇宙でも生活が出来るのです。軍施設で行った身体測定でも実証済みです。私は選ばれた人間なのです。
さあ、夢の宇宙へ。
ってそんなの。

