わぁ来てくれた。身だしなみ大丈夫かな。
さっと手櫛で髪を整え、振り返って、右手を前につき出す。


「菅谷くん! 好きです!一年前の入学式からずっと好きでした。あの私と付きあっ……」

「あのさ」

声が重なる。ん?この声菅谷くん??



違和感を感じて恐る恐る顔を上げると、


えええっ誰この人!!


目の前にいたのは菅谷くんじゃない、全く知らない男子。

どういうこと?

キョトンとしてると、目の前の男子が豪快に大笑いしだした。

「アハハッ 傑作。人間驚くとそんな顔になるんだね フフっ ごめん笑いが止まらないや ハッ」

何この失礼な人。

状況が掴めないまま、まじまじとその男子の顔を見る。
真っ黒でサラサラな髪と切長でシュッとした目元は、まさにクールという言葉がふさわしい綺麗な顔立ちで……

私と同じ学年色の青いネクタイをしてるからどうやら同い年みたい。
こんなに綺麗な顔なら目立ちそうだけど、見かけない顔だな。

綺麗な顔からは想像できないような無邪気な少年のような笑い方。


「アハハ。ヒィーお腹痛い。」

ちょっと笑いすぎじゃない。もう。

一通り笑い終わるとその人は言った。
「君がこの手紙の送り主か。残念。僕は古賀。菅谷くんじゃありません。この手紙僕の下駄箱に入ってたんだよね。菅谷くんに渡してもいいかなって思ったんだけど、下駄箱間違えるなんてどんな面白い子なんだろうなって気になっちゃってさ。ごめんごめん。」


はぁぁ!!


つまり私は菅谷くんの下駄箱じゃなくて、この古賀くんの下駄箱に呼び出しの手紙入れ間違えちゃったってこと!?



「で、どうする?僕は君の片想い相手を知っちゃったわけだけど、」

え?どうするとは?んん? 


「もしかして脅されてる?」
   

「やっと状況が掴めてきたみたいだね。君は僕に弱みを握られたってわけ。ってそんな脅すわけないじゃん。僕をどんな冷徹人間だと思ったわけ。フッ 想像力豊かすぎるでしょ。僕は協力してあげようかっていっているんだけど、」

ホッ。そうなんだ。いい人!!

「え。いいの?」

「うんもちろんいいよ。じゃあ今日は帰るね!また明日 木崎千春さん」
とか言いながら古賀くんは音楽室を出て行ってしまった。


あれ?私フルネーム古賀くんに教えたっけ?
手紙にも苗字しか書いてないはずなんだけど、