恐らく精霊さん達は、『争わなくて済む』道を選んだ。
でも人間は違った。人間側が選んだのは『進んで争いを仕掛ける』道を選んだ。

互いに魔力を扱うモノ同士にも関わらず、これほど道に違いができてしまったのは、奇妙としか言えない。

一体どちらの方が『得』なのか
一体どちらの方が『徳』なのか

そうこうしている間に、もう水路がいくつか完成している。水路の基礎ができたら次はその水路を整える必要がある。それは私が手作業で仕上げる。
やっぱりそのまま土を掘っただけの場所を水路にすると、何かと不安要素がある。補強できる場所は補強して、増水した際の対策として、即席の『水門』も作りたい。
一応、板でもどうにか水を堰き止められるけど、更に材料が揃うようになれば、大掛かりな仕掛けも作ってみたい。そのうち、この林がカラクリだらけになったら、それはそれで面白そう。そして、水路によって巡回させた水を林の外へと流す。それにはまだちょっと時間はかかるけど、少しずつ進めていけば、いずれ林の外へと続くだろう。
シナノ様の話によると、小川に流れる水の中にも魔力が含まれているらしく、その水を荒地に流す事で、魔力の枯れ果てた土地を復活させる事ができるとの事。
水を栄養源として、水路の近くにも沢山の植物が生成させるかもしれない。やっぱり水は、生命の巡回には欠かせない、基礎中の基礎である。
水の流れる涼しげな音が、労働で熱った体を落ち着かせる。川に片足だけ入れた時には、全身の鳥肌が驚喜して、まるでウェーブの様に肌が波打つのを感じる。
そのまま足涼みをしながら、私は大きなため息をつき、その場に横たわる。これこそ自然のもたらす至福の贅沢。肌寒い日に暖かいお湯に浸かった感覚にも似ている。
ヌエちゃんは、水を操る能力が得意な事もあって、寒さや冷えには大分強いらしい。確かに、ヌエちゃんは長い時間水辺の近くにいたのに、体が全く震えていない。
汗が冷えてきた日暮れ頃には、私の体がガチガチと震えていたにも関わらず。