「おぉ、そういえばまだ我の名前を言っていなかったなぁ。
 我の名は『シナノ』
 ヌエに召喚されし神獣。水を操る水龍なり。

 そこの水霊よ、此度は大変ご苦労であった。」

「いいえ、とんでもない・・・
 まさか、本物の水龍様にお会いできるなんて、思ってもいませんでした。」

シナノ様は、フワフワと宙に浮きながら、私の周りをグルグルと回る。まるで私を見定めている様に。でもその瞳は、水晶の様に綺麗だ。思わず見惚れてしまいそうになる。
私が生前読んでいた本の中で、「水や川に関する神様は『龍』の姿をしている事が多い」というワードがあった。それがまさか別の世界でも通ずるなんて、もう頭がついていけない。
ただ、私がシナノ様に触れると、シナノ様も嬉しそうにしてくれている。どうやら私は気に入られたようだけど・・・
オカルト話の中には、「妖怪や神様に魅入られると神隠しに遭う」なんて話もよく目にするけど、今回の場合はどうなんだろう・・・?
相変わらず、シナノ様の体はキラキラと光り輝いている。そのメカニズムを知りたい気もするけど、それはさすがに『愚の骨頂』か。
それに、精霊さんの口調や態度から考えると、どうやら精霊よりも、神獣の方が偉い存在みたいだ。畏まりながらも安心感を感じさせる精霊さんの表情から、シナノ様がどれほど凄い存在なのかが分かる。
私は、神に魅入られやすい体質なのだろうか?
それはそれで嬉しい気もするけど、ちょっと・・・複雑な心境。嫌なわけではないんだけど、普通の人間がこんなに魅入られてしまうと、逆に申し訳ない。