コンコンッ コンコンッ

「??」

窓の方から、微かに戸を叩く音が聞こえる。だいぶ弱々しい響きだったけど、今日は風もない穏やかな気候だったから、すぐ分かった。
その音が聞こえたと同時に、精霊さんが何故かハッとした表情で、勢いよく窓の戸を開ける。

「しっ・・・『神獣様』?!!
 何故こんな所に?!!」

声を荒げる精霊さんに驚いた私は、咄嗟に作りかけの糸を床に落としてしまう。精霊さんは、慎重に『ナニ』かを両手で掬い上げた。
そう、まるでリスや鳥などの小さな動物を、両手で守る様に。『神獣』という言葉が引っかかるけど、まず精霊さんが必死に呼びかけている存在を確認しないといけない。
ただ、人間である私が普通に神獣を見ていいのか不安になり、私は精霊さんの許しを乞う。

「私、見ても大丈夫?」

「大丈夫ですよ、どうぞ」

不安な表情の精霊さんは、ゆっくりと自分の両手を私に見せる。そこにいたのは、ちょっと『予想外』な姿をした神獣だった。
普通『神獣』と聞くと、かなり壮大なイメージを想像してしまう。大きな龍だったり、虎や狼などの凶暴な獣だったり・・・。
それらは全てゲームやアニメの影響なんだけど、本などから得られる、そうゆう『神聖な動物』の情報は、聞くだけでもだいぶ『ぶっ飛んでいる』事が多い。
目が沢山あったり、手足が沢山あったり、近づくだけでも怒りを買いそうな、そんな威厳と畏怖の念が籠った、卓越したお姿。
しかし、今私が目にしている神獣は、どう見ても・・・

『トカゲ』にしか見えなかった。