私はとりあえず、道具を持ちながら木々の隙間を通り抜ける。歩きながら地面をよく見ると、雑草や苔に隠れてはいるけど、整備された道の成れの果てが、林の奥まで続いていた。
精霊さんの言っていた通り、確かにこの先には『建物』がありそうだ。辺りを見渡すと、建造物の残骸もあちこちに見受けられる。
もう完全に朽ち果ててはいるけど、形から一体何だったのかは想像できる。道に並んで刺さっている『金属の柱』の正体は、恐らく『街灯』の成れの果て。
柱の足元にはガラスの破片も散乱しているし、辛うじて形を保っているガラスの塊は、まるで茶碗の様な半円の形をしていた。
しかも柱の先端には何らかの装置がある。試しに近くの木に登って確認すると、まるで電球の内部にあるコイルの様な物があった。
ただ、もう完全に錆び付いているから、復元させるのは困難だ。そもそもこの街灯は、一体どうやって魔力を用いて灯りを灯すのか、その仕組みすらも私はまだ知らない。
仕組みも理解していないのに、無闇に取り組むとこっちが怪我をするかもしれない。今のところはそっとしておいた方がよさそうだ。
もしかしたら後々仕組みが分かるかもしれないし、下手にいじって大変な事になっても困るだけ。そう、私が小さい頃、ノコギリの使い方が分からず、素手で歯を触ろうとして父に怒られた時のように。

「ほら、此処よ。」

「・・・おぉ、思ったより凄い・・・」

木々が拓けた場所にたどり着くと、そこにはかなり広い空間があり、その中央には、古びた教会があった。私が住んでいた沙斗島にも教会はいくつもあったけど、その外観とほぼ変わらなかった。
だが、相当長い年月放置されていたせいか、雑草は伸び放題、蔦は生え放題、ガラス窓は灰色に曇っていた。ただ、建物としての姿はしっかり保たれていた。
人が長い間立ち入らなかった事が要因か、建物が崩壊するような天候がしばらく起きていなかったのも要因か。まぁそんなのどっちでもいい、住居を探していた私にとっては、絶好の住処だ。