私はひとまず、その精霊さんに落ち着いてもらって、自分の身に起きた事を、簡潔且つ分かりやすく説明した。この世界では通じそうのない、用語や名前は避けて。
とりあえず、自分が一度死んでしまった事と、この世界に転生された事を、おおかかに説明する。馬鹿馬鹿しい話にも思えるけど、本当に私が体験してしまった事だから、嘘も虚偽もあったものではない。
話を聞いていた精霊さんの顔が、徐々に真剣になってくる。説明するのに夢中になっていると、野生動物も群れ始めた。生きている動物の体は、とても暖かい。
私の家では、犬や猫が飼えなかったから、動物とどうやって接していいか分からなかった。でも何故か、この林に住んでいる動物達は、妙に人懐っこい気がする。
害がない事が分かったからなのか、それとも精霊さんの力なのかは、分からないけど。
ちなみに、犬や猫が飼えなかった訳の一つが、『アレルギー』だ。私の弟が、昔からアレルギー体質で、食べ物のアレルギーはないものの、犬・猫・花粉・埃のアレルギーを抱えていた。
少しだけ一緒にいるだけならまだいいのだが、一度弟が、友だちに連れられて本土の猫カフェに行った時は、相当大変だったそう。
鼻水は出るし目は痒いし肌は痒くなるし。結局症状がなかなか治らなかったから、本土の病院で診てもらった。一応薬を処方されて、数日後には全治したけど。
島にも一応病院はある。だが、個人が経営している小さな病院だ。骨折とか精神医療などは行えない。一応弟がアレルギー持ちという事で、アレルギーを抑える薬は常備させてもらっている。
島には腰の弱いお爺さんお婆さんも多い。本土まで行けない人達にとっては、その病院が頼みの綱なのだ。
私も何度かお世話になっているけど、滅多に風邪をひかない私にとっては縁遠い場所だった。