「ほえー・・・
 なんか『シェルター』みたい。」

「・・・『シェルター』って何?
 それも姉さんが生きていた世界にあったもの?」

ベヒモス大国がそれほど用心深いのか、それとも用心深かったのは住民だけの話だったのかは分からないけど、それが今でも利用できる、そう彼が話してくれた。
そして、母に禁忌の術を施した場所も『地下』である。つまり、地下道を辿って城まで辿り着けば、空を泳ぐ彼の母に出くわしたりしない。
下手に私達の行動がバレてしまうと、タダでは済まない事態も起こりうる。その為には、自分達の姿を隠しながら、城の地下室へと向かわなければならない。

「一応地下道の順路は覚えているから。道案内に関しては任せてくれ。・・・でも、地下にも飢
 獣がいる可能性も無いわけではない。 
 だからその時は、よろしく頼むよ。私も一応魔術は使えるけど、城の跡地も荒野と変わらない
 状況だ、下手に魔術を連発すると、こっちの身がもたない。
 私は剣術にも武術にも秀でていない。だからこそ、今回の最大の戦力は、ユキナさんに託され
 ている。」

「姉さんの戦闘サポートはいくらでも任せてください!!」

「・・・ちなみにシナノ様は戦える?」

「ん? まぁ・・・あまり期待はしないでくれよ。
 そもそも私は上位の精霊でしかない。元々戦う気質でもなかったからの。」

「うーん・・・
 まぁいいか、シーズさんが適切な地下道を教えてくれるわけだし、飢獣との混戦は免れ
 る・・・かな。」

ここまで支度を整えたのに、「戦力になれる人間が私しかいないのは不安です」なんて言えるわけもない。ここは、剣へと姿を変えた精霊さんの力を信じるしかない。
ブローチがない今、あの古龍の弱点や詳細は一切調べられない。とにかく撃退させる以外に選択肢はない。だったら、もう難しい考えは不要だ。