話し合いは当然荒れた。それもそうだ、対処も対抗もできないなら、「どうすればいいんだ」って話。ただ、放っておくわけにもいかないのも現状。
さっき住人の一人が言っていたけど、『犠牲』を覚悟で調査した方がいいのかもしれない。ただ、相手の能力が、魔力を奪う『だけ』とは限らない。
もし、あの黒い龍が私達人間を容赦なく食うような存在だったら、ますます早い対処が求められるけど・・・
魔力を取り上げる以外にも、厄介な能力を持ち合わせていたら、それこそ私達に勝ち目はない。ただ、そうだとしても打開策が思いつかない。
此処を離れたとしても、住民達の証言が本当なら、この林以外に私達が住める箇所はない。1から荒地に魔力を宿らせる事も困難だろう。
例えそれで、第二の拠点が政策できたとしても、あの黒い龍の脅威から完全に逃れたわけではない。住処を襲われては場所を変え、また襲われては場所を変え・・・
そんなの非効率すぎる。生きている人間にも限りがある以上、人手も資源も無駄にはしたくない。それに、もし私達が林を捨てたら、最初に犠牲になるのは精霊さん達だ。
今までずっと手助けしてくれた大切な仲間を捨てるなんて、私達には到底できない。私達は種族は違えど、一緒にこの厳しい状況を生き延びてきた、『家族』と言っても差し支えない。
この林に宿る動物や精霊は、幸いな事に、人間に対して友好的だ。もし違う場所に動物や精霊が住んでいたとしても、今のような友好的な関係を築けるのかも分からない。
最悪、私達人類を敵視してしまう可能性だってある。そうなったら、完全に私達人類の劣勢。

結局、話し合いは何も進展がないまま終わってしまった。私達は言い合いに疲れ果て、そのまま自分達の寝床へと帰って行った。
頭を使いすぎた影響で、皆かなりフラフラな状態。私もこればっかりは、DIYで解決できそうにない。
生前、「諦めも肝心」という言葉を本で読んだ事があったけど、今回に至っては、それ以前の問題だ。選択肢は限られている筈なのに、進む為の手立てがない。
ついさっきまで、耳が痛くなる程の話し合いが繰り広げられていたけど、話し合いが終わった途端、林の中は静寂に包まれた。
聞こえるのは、風が木々を撫でる音。ここ最近は、夜行性の動物も大人しい気がする。だから余計に不安が増してしまう。
生前は不安になるとパソコンで音楽を流していたけど、この世界に至っては、そもそも音楽があるのかも分からない。