その言葉を聞いて、慌てて小川の周りを散策する。いつもは見慣れた筈の風景なのに、何故か今日に限っては、別の場所にも感じてしまう。
林全体が、あの黒い龍によって魔力が吸い上げられてしまった影響なのか、妙に木々のざわめきが騒々しく聞こえる。まるでお互いの無事を確認している様にも見えた。
動物達の姿も一切見かけない。いつもは教会から1歩踏み出すだけでもすぐに見つけられるのに、今は何故か何処にもいない。・・・いや、正確にはいたのだが・・・

「・・・やっぱりか・・・」

小川に浮かんでいたのは、ウサギの亡骸。しかも腐敗が全然進んでいないという事は、ついさっき絶命した事になる。体には何の外傷もなく、病気でもなさそうだ。
しかも、散策を続けていると、ウサギだけではなく、狐や鳥の亡骸も数体発見する。動物にとっては、あの黒い龍を一眼見ただけでアウトだったのだろう。
寿命が近い動物は『食肉』として重宝されているけど、この動物達は・・・さすがに食べない方がいいだろう。ただ、念のため持って帰る事に。

「・・・ユキ・・・ユキ・・・ナ」

「っ!!! 何処?!! 何処なの?!! 
 返事をして!!!」