バリィィィィィィィィィィン!!!

突風によって暴れ回る、一本の木の枝。それが、私の頭目掛けて飛んで来る。私は咄嗟に両手で頭を防御しようとした。だがそれが最大のミスだった
手に持っていたブローチをすっかり忘れていたのだ。木の枝は不運にもブローチに直撃。その衝撃に耐えられず、ブローチは粉々に粉砕してしまった。
私が目を開けた時には、レンズからキラキラした何かが流れ落ちている。ガラスでもない、綺麗な光の粒。その光の粒はそのまま突風に煽られて、まるで粉雪の様に消えていく。
結局私の手元に残ったのは、ブローチの縁部分。金色のリングだけだった。しかし、ブローチを握っていた私の手も頭も、無傷で済んだ。
無傷を確認したと同時に、さっきまで自分の体が吹き飛ぶ程の強風が、パッタリと止む。でもまだ空は真っ黒なまま。それにあの奇怪な鳴き声もまだ響いている。
私は強風がおさまったと同時に、ブローチの縁部分を懐に入れて、そのままヌエちゃんを引き摺ってでも教会に運ぼうとした。
だが、行き着く暇もなく、更なる異変が私達に迫る。

グァアアアアアアア・・・

さっきから聞こえる奇怪な鳴き声が、いきなり真上から響いてくる。つまり鳴き声の主が今、私達の真上にいるという事。
でも、どう考えても太刀打ちできる相手に思えない。鉄の剣一本で、どうにかできるレベルじゃない。今の私たちは、完全に巨人に狙われる小人だ。
ここは下手に相手をせず、隠れてやり過ごすのが賢明だ。

しかし、それを相手が許す筈もなく・・・

「・・・あ・・・あ・・・」

「ヌエっ!!! 声を抑えて!!!」