「此処の土は・・・しばらく使えそうにないな・・・
 まぁ念の為、ブローチで確認してみるかな。」

そう言いながら、私が懐にしまい込んでいたブローチを引っ張り上げた



・・・その時だった



ギィィィヤァァァァァ・・・

「っ?!!」 「姉さん!!!」

さっきまで遠くで作業をしていたヌエちゃんも、この不気味な音に驚き、一目散に私の元へと駆け寄る。私も急に寒気が襲い、そのままの姿勢で固まってしまう。
人間の悲鳴にも似ている、動物の鳴き声とも言えない、正体不明の音。飢獣の音にしても不自然だ。辺りに飢獣の気配は感じられないし、飢獣だとしてもあんな奇怪な鳴き声なんてしない筈。
それに、音の響きから察するに、此処から相当離れている場所に音源がある。ただ、この先には荒野しかない筈。
私達が固まっている間にも、その奇怪な音は、遥か向こうから響いて来る。私達はただ震えているしかできなかった。
一応私が剣を握り締めているけど、鳴き声を聞いただけで太刀打ちできるか不安になる。
それに、音に反応したのは私達2人だけではない。さっきまで何処かでお散歩をしていたシナノ様も、私の肩に乗っかってこう言った。

「姿勢を低くしろ、決して声をあげてはならないぞ。」

「はっ・・・はい・・・」

「シナノ様・・・シナノ様・・・」

「ヌエ、慌てるでない。落ち着いて・・・」