ヌエちゃんがこの前話してくれたけど、シナノ様はこの世界で、幾度か召喚されていたそう。ただ、召喚者が亡くなったり、自らが魔力の供給を断ち切れば、自然消滅するんだとか。
だからだろう、この世界の知識にやたら詳しかったり、人間に対する『扱い方』に慣れているのは。魔力を使って使い魔を召喚する魔術師は多いが、神獣を召喚できる魔術師は、世界でも限られていたんだとか。
私も別に、シナノ様が嫌いなわけではない。ただ、時々何も言わずに首筋にピタリとへばりついてくるのだけはやめてほしい。それで何度心臓が止まりかけたか、もう数えるのもやめてしまう程。
しかし、シナノ様はそれを一向にやめる気配を見せない。シナノ様曰く、「こうすれば皆が喜んでくれるからな」と言っていた。喜んでない喜んでない。
シーズさんの場合、『父』と呼ぶには、ちょっと・・・抵抗がある。どちらかというと、『親戚の叔父さん』みたいな感覚。
私の父が、シーズさんの様な『インテリタイプ』じゃなかったからかもしれない。シーズさんも一応DIYはできるけど、体力がないからあまり大きな物は作れない。
薬や紅茶はあっという間にできるけど、シーズさんが作れる道具は、『カップ』が限界みたいだ。でもカップ自体は結構デザイン性のある仕上がりではあるから、女性住人達からの人気が高い。
勉強に得意不得意があるように、DIYで作る物によっても得意不得意が分かれる。ヌエちゃんの場合、シーズさんとは逆に、大きな物を作る方がやる気になるんだとか。
確かに、ヌエちゃんの使う魔法によって作られた水路は、もはやちょっとした用水路になっている。生活用水の為に使う水路と、飲水専用の水路とも区分している。
ヌエちゃん自身も水路を作るのは初めてだったそうだけど、最初にしてはかなり上出来に思える。ヌエちゃん自身もこの仕事を楽しみながら営んでいる様子。

「・・・・・」

「・・・ヌエちゃん? どうしたの?
 魔力の使いすぎ??」

「いや・・・あんまりにも楽しくなって・・・ついクルクル回り続けたら・・・
 ・・・ウゲェ・・・」

「馬鹿か。」