ただ、差別するかしないかは、本人の自由。私は差別を強制されているわけでもなければ、教え込まれているわけでもない。だから、彼を差別するかしないかも、私の自由だ。

「えっと・・・私も色々と事情があって・・・
 此処では詳しく言えないんですけど・・・長くなるから。」

「『事情』??」

「まぁ、とにかく
 私はこの世界の事情とか、社会背景とかは全っ然気にしません。むしろ気にする『身分』でも
 ないので。」

「???」

「だから、そういった願望なら、私の負担にもなりません。むしろこの事実を隠せば、貴方が皆
 と調和できるんですから、むしろ協力させてください。」

「・・・・・確かに・・そうだ
 私がベヒモス大国出生である事実『のみ』を隠せば、全てが丸く収まる。だが君はそれでいい
 んだね?」

「何遠慮してるんですか?! 貴方は死にたくないんでしょ?!」

つい我を忘れて怒鳴ってしまった。あまりにも周りくどい彼の言い回しに、ウズウズした気分を吹っ切りたかった。
彼の気持ちも確かに分かるけど、こうゆう対応をされてしまうと、助ける気が何故か失せてしまう。そんな自分の感情に蓋をする為に、あえて強引な手段に打って出た。
それに、その方が彼も良い筈だ。何故なら彼がずっと望んでいたのは、出世異国も人種も気にしない、『彼自身』を見てくれる人。
そうだ、彼だって『人間』だ。お腹も空くし、寒さは嫌だし、誰がが側にいないと寂しい。それは私達と全く変わらない。
だからこそ、同じ人間である私が助ける事に、何の不都合もなければ、不自然もない。同種が助け合うなんて、動物番組でもよく見てた。
私達だって、元を辿れば『動物』だ。そんな本能に嘘をついたところで、心に蟠りが残ってしまう今後は、予測しなくても分かる。
私はヨレヨレになった彼の体を引き摺るように、教会へ帰宅。中で待っていたヌエちゃんやシナノ様は、驚きながらも彼にご飯を提供してくれた。
彼は食い入る様にスープを飲み干し、その後はぐったりとした状態のまま、私達に自己紹介を始める。