アタシは顔を真っ赤にしながら慌ててハンカチを取り出した。


「本当にごめんなさい!!」


「たいした事ないから平気だよ。」


少しハスキーのかかった声だ。


ハンカチでスーツの裾を拭きながら見上げると、三十歳は過ぎてるであろう顔の整った紳士的な男だった。


アタシは一瞬ドキっとしてしまった。


それと同時にまた恥ずかしくなった。


男が言った。


「じゃぁこのお詫びに少しだけ俺に付き合ってくれないかな?」


アタシは警戒した。

いくらいい男でも初対面の得体の知れない男だ。


「大丈夫。人のいない場所には誘わないよ。」


男は優しく微笑んだ。


アタシは何故だかこの男は大丈夫だと思った。


「少しだけなら平気ですよ...。」