それからも杉田純一は色々と語った。


アタシはただただ、ビールを飲みながら頷く。


「俺の母親はね、顔が綺麗な人だったんだ。だからよく男の人にもてる人だったんだよ。」


「へぇ~。だからオーナーは顔立ちがいいって事で、自慢ですか?」


横目でチラっとオーナーの顔を覗いた。

アタシは皮肉と冗談を合わせて言ったつもりだったが、オーナーの顔が一瞬曇った。


そんな表情を初めて見たので一瞬戸惑った。


けれど...


そんな表情もほんの一瞬で、いつもの嫌味な笑みに戻った。

「だからこそ毎日、毎日違う男が部屋に来ていたよ。」


「えっ...?毎日部屋に...?」


「そう、毎日。毎日。そのたびに母の獣の様な声と見知らぬ男の吐息と...。」


アタシは一瞬杉田純一の言っている言葉の意味が理解できなかった。


キョトンとしているアタシを無視して話しを続けた。


「俺は母達がその行為になっている時は必ず外に出たんだ。あの獣の様な声を聞くのが嫌でね。それに、俺もその行為に付き合わされた事も何度かあったし。」

ニコっとアタシに目を合わすとグラスの酒を飲みほした。


グラスの中の氷が溶けて、カランっと良い音色を鳴らしながらグラスの底に落ちていった。