村上は暫く車を走らせると、国道から外れた道へと入った。


「お酒飲みたい？」


「はい。飲みたいです。」


村上との初デートにシラフなんて心臓がもたない。


アタシらしくもなく、緊張していた。


「着いたよ。」


村上が車を止めた。


初めて来る店だ。


木造の造りで、居酒屋ともとれる外観。


村上はアタシの前を歩くと扉を開けた。


「いらっしゃいませ。」


若い女の店員が席まで案内してくれた。


案内された席は小さな小上がりになっていて二人だけの密閉された部屋だった。


「このお店はよく来るんですか？」


アタシは整った村上の口元を見ながら聞いた。


「めったに来ないよ。この店落ち着くから、まなちゃんとゆっくり話せるかと思って。」


一瞬ドキッとした。


あまりにも素敵な声で、整った口元でそんなセリフを言うから。