玄関のドアを開けたら獣人に捕獲されました。



「えっ?えっ……えぇ??」



私の周りには5~6人の男性がいた。公園のような芝生の広場で私を遠くに眺めている人たちがいる。



「あっ……間違えました……」



開けたドアを閉めようと手を伸ばしたら空振り。



「!?!?」



私が開けたはずの玄関がなくなっていた。明らかに日本ではない景色、そして見たことがない服装の人々。アイボリーのパーカーにひざ丈の青いスカートの自分のアウェイ感が半端ない!



心配そうな顔をして声をかけようとしてくれているようだけど、そんなことを気にしている場合じゃない。



「……時間が……会社が!今日ゴミ当番が」



非現実的な世界を目の前にし、まずは遅刻の連絡をしてから考えようと思った私は相当混乱していたに違いない。腕時計を見て同僚に連絡をとスマホを手にしたとき





「ちょっと失礼」





反射的に声がした方へ顔をあげると青い髪の男性が立っていた。





「ひっ……!」





首を思いっきり上げると、私を見下ろす目と目があって足がすくんでしまった。腰が抜けそうになると、後ろにいた男性に腰を支えられ背中が男性の胸にくっついた。振り返ると赤茶けた髪をちょんと後ろで1つに束ねている男性が柔らかい笑みを浮かべていた。



33歳の会社員レイナ、ついに私の頭はおかしくなってしまったのだろうか。おかしいかな、なぜか頭の上に耳のようなものが見える気がする。





「んぅっ……」





青い髪の男性に両頬をつかまれると唇に柔らかいものが当たった……だけではなく、そのままぬるっとした感触が口の中に広がった。





「……合格。」





言葉を発する間もなく頭に耳がついている男性たちに抱えられてどこかへ運ばれた。







◇◇◇







ここは獣人と人族が共存する世界フロレンティア。



7つの国が存在する。



数十年に一度、異世界から迷い込む人間が現れるという。

異世界人はどのような方法でいつ現れるのか誰も知らない。定期的に表れるので各国に文献はあるらしいが、全部が正しいとも言えないし出回っていない情報もあるらしい。



というのは、『異世界人は魔法の無い世界からやってきて国を発展させる』というのがこの世界の共通認識だからだ。



この世界にはない何らかの知識や能力を持っていて、それらが国の発展を後押しするらしい。



例えば、この世界にも水道と下水道がある。これは数十年前に現れた異世界人がこの世界に広めたのだ。この世界には魔法があるので、魔法が使えるものは水を出せるのであまり困らないらしいが、町には魔法が使えない者も少なくないらしい。今も井戸はあり使われているが、飲み水が水道で供給されるようになり、また下水道ができたことで衛生環境が改善されたという。



だからそういったこともあって、異世界人は国賓として大切に扱われている。当然、国益のために隠したい情報もあるだろう。国の威信にもつながる。異世界人が数十年に1回現れるがどの国かは特に法則は無いようだ。



私はそのなかのロトという国にいるらしい。西側は国境となっているが、東側は海があるので貿易も盛んなようで、この部屋にある高価に見える家具なども輸入したものとのこと。





「私はなんでこんなことになっているのでしょうか」

赤い髪の男性……ルイは膝の上に私を乗せて私にクッキーを口元にもってくる。

「ルイ、喉が渇いたんじゃないか?」

青い髪の男性テオはティーカップを指さした。

「すみません。気がつかなくて」

ティーカップを手にしようとするので慌てて手を振った。

「ちっちがいます……あっいらないということじゃなくて……!」

私が断ろうとしたらルイは眉を下げて悲しそうな顔をしたので慌てて訂正した。

「喉は渇いています。渇いているんですけど……」

「ならよかった」

どうぞと私の唇にそっとティーカップが触れたので彼を上目遣いに見るとニコっと笑みを浮かべたのでさっと目をそらした。

「気を付けてくださいね」

そういいながらじっと見つめるので少しだけ口をあけた。お茶を飲ませたルイは満足したようで、ティーカップを戻すと私のことを支えなおした。



「レイナは番だからな」



テオは私のあごをグイっと持ち上げると唇をおとした。苦しくなって口を少し開くとぬるっと温かいものが滑り込んできて口の中をやわやわと撫でた。



「……っ」



リップ音に体をビクッとさせると、背中をルイの手が撫でた。



「ふぁ……」

「私もいいですか?」



そっと変わるとルイが口びるにチュッと吸い付いた。



「んっ……ぁ……」



静かな部屋にリップ音がよく響く。胸にきゅっと締め付けられるような感覚が広がった。



「まっ…ちょっ…と……」



唇が離れたかと思うと向きを変えてさらに深く深く口づけられる。初めての感覚にルイの胸元をつかんでいた手から力が抜けた。私がくたっとしたことに気がついてやっと唇をはなす。



「わかった?」



ルイは頬にキスを落としながら確認をするがなんのことかわからない。



「人族だからな。そのうちわかるだろ。」



ほらっとルイの腕から私の体を持ち上げたテオはそのまま歩き出した。



「いきなりで疲れているだろ?少し部屋で休むといい」



シンプルな部屋へ運ばれるとベットの上におろされた。



「続きはまたあとでな」



瞼が重くて開かない。ベットに体が沈みこんでいくような感覚を感じながら眠りについた。