「ようやく静かになったね」

「あの、でも……外、揉めてませんか?」

「向こうはライラが上手くやるさ。彼女もオニキスの足止めくらい出来るだろう」

「アレン様、ライラと仲良くなったんですか? いつの間に?」

「あれから少し話をさせてもらってね」

「そうだったんですね」

 やはり主人公とメインヒーローは仲良くあってほしいものだ。イリーナは微笑ましい気持ちでいっぱいになった。

「俺の婚約者を侮辱した罪はどう償うつもりかと、きっちり話をつけさせてもらったよ」

(全然微笑ましくなかった! ライラが怯えてたの絶対それが原因!)

 アレンに問い詰められたライラはさぞ怖ろしかったことだろう。彼の姿を目にして悲鳴を上げるほど、その恐怖は計り知れない。まるで昔の自分のようだと同情してしまう。

「君たちの言う乙女ゲームとやらについてもしっかり教えてもらったよ」

「ライラ、話したんですか!?」

「詳しく教えてくれたよ」

 それは教えてではなく、教えさせたの間違いだと思う。追及されないとは思っていたが、アレンの情報源は他にあったらしい。重ねてライラには同情したくなった。

「ちょっと可哀想ですね」

「何を言う。俺の大切な婚約者を貶めたんだ。その報いは受けてもらうよ」

「あの、まだ婚約者じゃ」

「残念。もう婚約者だよ」

「え?」

 想定外の返しにイリーナは言葉を失った。

「おめでとう。今日をもって俺たちの婚約は正式に認められた」

「は、はあっ!?」

 ちっともめでたくない。そもそも何故!?

「どうして、なんで……私はただの引きこもりで、侯爵家の娘とはいえ婚約者に選ばれるほどの功績があるはずはなくてですね!?」

 つい最近まで幼女として過ごしていた。選ばれるような覚えがない。

「謙遜することはない。君の研究成果はみなの認める所となった。君は国の宝だ。俺の隣に在る女性としてこれほど相応しい人はいない」

 ファルマン打倒のために動き出した結果が自分の首を絞めていたらしい。