(なんでライラがここに!?)

 今度こそら目の前にいるのは乙女ゲームの主人公ライラだった。

(お、落ち着いて、私は幼女なんだから!)

 同じ確認を先日から何度もしている。

「そうだ、貴女大丈夫!?」

 ライラは尻もちをついて固まるイリーナを助けようと近付く。しかし彼女の目には映っていないのか、今にも薬草を踏みつけそうだった。

「危ない!」

 イリーナは夢中で叫んだ。声を荒げると驚いたライラの足が止まる。

「な、何!?」

「それ貴重な毒草!」

「毒草!?」

 ライラは全身で飛び退いた。

(良かった。大切に育てた毒草は無事ね。それ高いんだから!)

 イリーナの研究で役立つ植物の一つで大切に育てたものだ。しかしライラにとってイリーナの行動は毒草から守るたのものとして映ったらしい。

「ありがとう! 私のことを助けてくれたのね! それに小さいのに物知り。偉いねー」

 ライラが笑顔で頭を撫でてくる。

(なんで私、主人公に頭撫でられてるんだろう……)

「あれ? 貴女……」

 何かに気付いたライラが手を止め、じっくりとイリーナの顔を覗き込んできた。

(まずい、イリーナだってばれた!?)

「な、なあに? お姉ちゃん……」

 焦るイリーナは幼女スマイル総動員で対応に当たった。

「近くで見るとやっぱり可愛い!」

 ぎゅっと抱きしめられたイリーナはさらなるパニックに陥った。

(そ、そうよ、これが私の薬の実力よ! ぜんぜん、ちっとも悪役令嬢ってばれてないし! やっぱり幼女が悪役令嬢なんて誰も思わないんだわ!)

 内心では汗をかいていたが、自分を褒めることで心を強く保とうとした。