その頃――
「平和って最高?!」
父は仕事に向かい、母は公爵夫人主催のパーティーに招集され、兄が学園へと登校したイリーナは束の間の平穏を享受していた。幼女化してほんの一日だというのに、昨夜からの家族の構いっぷりには凄まじいものがある。断れない用事で家を空けている今がチャンスと、イリーナは部屋でくつろぎ放題だ。
幼女化の研究が一段落したとなれば徹夜で研究を続ける必要もない。朝はのんびりと起床し、ベッドに寝そべって本を読むという贅沢を満喫している。
昨日から運ばれてくる飲み物は全てジュースになったけれど、これはこれで美味しい。お茶うけにはクッキーやチョコレートといった子どもが好みそうなお菓子が並んでいる。
イリーナはうっとりと顔をほころばせた。
「はぁ……なんて贅沢」
本来イリーナも今日から学園に通う身でありながら部屋でごろごろしているのだ。主人公は今頃学園で授業の説明でも受けているだろう。
(もう全員の初対面イベントは終わった頃かな? 今日は授業もないし、説明が終わったら入学パーティーの準備をしているはずよね。主人公が転生者なら悪役令嬢の姿がないことを不思議に思っているかもしれないけど、悪役令嬢は幼女化してシナリオを回避しました。どうか探さないで下さい――っと!)
部屋から静かな祈りを捧げるイリーナであった。
「はあ、静かに読書って最高……って、なんか外騒がしい?」
耳を澄ませると異様な気配が伝わってくる。しかもそれはだんだんと近付いていた。
「お待ち下さい! お嬢様は体調が優れないのです!」
慌てたようなメイドの声がする。タバサは買い物に出ているので来客の対応に当たっているのだろう。その対応に訪問者は苛立っているようだった。
「だから、どこが悪いと訊いている! 命に関わる病か!?」
「それは……」
「俺は彼女の婚約者だぞ。真実を知る権利がある! イリーナ!」
静止を振り切って部屋に飛び込んできたのはアレンだった。
「イリーナ、俺は君を愛している! 君を失うかもしれないと知って、初めてこの想いを自覚した。だからイリーナ、どうか死なないで……イリーナ?」
ベッドの上でクッキーを手に固まる幼女。
突入したはいいが思わぬ光景に固まるアレン。
その背後ではひたすらメイドたちが慌てふためいていた。
「平和って最高?!」
父は仕事に向かい、母は公爵夫人主催のパーティーに招集され、兄が学園へと登校したイリーナは束の間の平穏を享受していた。幼女化してほんの一日だというのに、昨夜からの家族の構いっぷりには凄まじいものがある。断れない用事で家を空けている今がチャンスと、イリーナは部屋でくつろぎ放題だ。
幼女化の研究が一段落したとなれば徹夜で研究を続ける必要もない。朝はのんびりと起床し、ベッドに寝そべって本を読むという贅沢を満喫している。
昨日から運ばれてくる飲み物は全てジュースになったけれど、これはこれで美味しい。お茶うけにはクッキーやチョコレートといった子どもが好みそうなお菓子が並んでいる。
イリーナはうっとりと顔をほころばせた。
「はぁ……なんて贅沢」
本来イリーナも今日から学園に通う身でありながら部屋でごろごろしているのだ。主人公は今頃学園で授業の説明でも受けているだろう。
(もう全員の初対面イベントは終わった頃かな? 今日は授業もないし、説明が終わったら入学パーティーの準備をしているはずよね。主人公が転生者なら悪役令嬢の姿がないことを不思議に思っているかもしれないけど、悪役令嬢は幼女化してシナリオを回避しました。どうか探さないで下さい――っと!)
部屋から静かな祈りを捧げるイリーナであった。
「はあ、静かに読書って最高……って、なんか外騒がしい?」
耳を澄ませると異様な気配が伝わってくる。しかもそれはだんだんと近付いていた。
「お待ち下さい! お嬢様は体調が優れないのです!」
慌てたようなメイドの声がする。タバサは買い物に出ているので来客の対応に当たっているのだろう。その対応に訪問者は苛立っているようだった。
「だから、どこが悪いと訊いている! 命に関わる病か!?」
「それは……」
「俺は彼女の婚約者だぞ。真実を知る権利がある! イリーナ!」
静止を振り切って部屋に飛び込んできたのはアレンだった。
「イリーナ、俺は君を愛している! 君を失うかもしれないと知って、初めてこの想いを自覚した。だからイリーナ、どうか死なないで……イリーナ?」
ベッドの上でクッキーを手に固まる幼女。
突入したはいいが思わぬ光景に固まるアレン。
その背後ではひたすらメイドたちが慌てふためいていた。



