食事を終えたイリーナはようやく一人で部屋に戻ることを許された。オリガはもちろん、オニキスまでもがイリーナの挙動を気にしてくるので子どものふりも楽じゃない。一人で眠れるかとまで心配されたが、一人で寝かせてほしいと頼み込んだくらいだ。

「やっと自由がもらえた……」

 幼女化がこんなにも疲弊するものだとは思わなかった。
 ベッドに倒れ込んだイリーナは自身の手足の短さを改めて実感する。いつも使用している半分ほどしか使っていない。

「本当に小さくなったんだ」

 興奮して眠れないのか目が冴えている。そんな時は新しい研究に意識を向けるのが一番だ。

「あれ? 私、研究室の明かり消したっけ?」

 眠るどころか些細なことが気になりだしてしまったイリーナはベッドを抜け出し研究室へと向かった。
 研究室は元倉庫なので屋敷の奥にある。両親たちはイリーナが騒ぎを起こすまで、そこが研究室に改造されていることを知らずにいたほどだ。
 僅かに開いた扉から漏れる明かりは消し忘れを意味している。戻ってきて良かったとイリーナは扉を開けるが、先客がいたらしい。

「父様!?」

 手元の資料から視線を上げたローレンも娘の登場に驚いていた。ローレンが手にしているのはイリーナの研究成果をまとめたもので、どうやらそれを読んでいたらしい。

「父様、それ……」