【電子書籍化】悪役令嬢は破滅回避のため幼女になります!

「兄様?」

 無邪気なふりをして首を傾げると、オニキスは泣きそうに瞳を歪める。

「すまないイリーナ。力の及ばない兄で……」

「兄様?」

「俺はお前を誤解していた。兄失格だ。最後にお前と会話をしたことさえ思い出せない、どうしようもない兄だった。だがお前は違った。素晴らしい魔女だ。今更と思われるかもしれないが、俺はお前を誇らしく思う。自慢の妹だ。それが、それがこんなことになるなんて……っ!」

「オニキス、私たちも同じ思いよ」

 息子の悲壮な表情にオリガまで涙ぐむ。席を立ったローレンと家族に寄り添った。微笑ましい家族の集まりだが、あまりの悲痛さにイリーナは唖然とする。

(なんか私死んだよな雰囲気なんですけど、ちょっと若返っただけですよ?)

 感動的な場面を見せられるほど、イリーナの心は渇いていった。

「あの……」

 イリーナの声に視線が集まる。

「イリーナは大丈夫ですよ? いつか元に戻る薬を作ります」

 嘘ではない。薬の作り方は完璧に憶えているし、元に戻る薬は用意もしてある。だがイリーナにはあと数年元に戻るつもりがないだけだ。

(私は主人公が学園を卒業してからゆっくり第二の人生を始めるのよ!)

 イリーナは幼い身体で精一杯微笑む。そう、幼女化に成功した自分に怖いものはない。攻略対象の兄にも、その家族にも微笑める余裕が生まれていた。

「イリーナったら、あぁっ! 貴女、私たちを安心させようと無理をして!」

「え? え?」

 感極まったオリガはハンカチで口元を覆う。

「なんて健気なんだ……」

 呟いたオニキスにオリガは何度も同意していた。