じりじりとイリーナは目の前の攻略対象を見つめた。彼が手入れをしているのなら無断で鉢植えを増やすこともできない。こんなところまで庭師の手が行き届いていたことに感動するが、もっといい加減でもいいとも思うイリーナであった。
イリーナは勇気を出して相談を持ちかける。
「あの、ジーク。お願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「私ね、植物を育てたいんだけど、少しだけこの場所をかしてくれないかしら。少しでいいの! 一角とかでもいいから」
「何言ってるんですか、お嬢様」
手入れをしている庭を勝手にいじられたら誰だって嫌だろう。なのにジークの声は明るい。
「ここはお嬢様のお屋敷なんですから、僕に遠慮する必要なんてないですよ。植物、何を育てるんですか? 僕にも手伝わせて下さい」
「ジーク!」
なんて純粋で優しい子なのだろう。おかげで毒草を育てたいとは言い出しにくくなったけれど、植物に詳しいジークがいれば心強い。たとえゲームのイリーナには優しくなくても植物には優しい人だ。
ジークの参戦により、課題となっていた研究資金の調達にも光明が差す。タバサを通じて町の商業組合に所属したイリーナは薬草栽培の内職を始めた。練習のためにと魔法薬作りの内職も引き受け、順調に研究資金を稼いでいった。
こうして侯爵邸は幼女の手に落ちたのである。
多くの人々から協力を得たイリーナはいよいよ薬の生成にとり掛かる。まずは簡単な調合からと、肌荒れに効果のある薬や疲労回復の栄養ドリンクから試作を始めていった。やはりここでも材料をみじん切りにする正確な包丁さばき、何度不味い失敗作を食べても諦めない根性、調味料の配合で培った繊細な調合は大いに役立った。
そんな生活が数年も続けばイリーナは立派な引きこもり令嬢だ。毎年恒例の誕生日パーティーも六歳を境に開催されることはなくなった。パーティーで倒れたこともあり世間では身体が弱いと信じられ、いつしか幻の姫とまで言われるようになる。
(実際はただの引きこもりなのにね)
そしてイリーナは見事若返りの薬を完成させた。くしくもその日は学園入学の前日。しかし天はイリーナに味方したのである。
(勝った!)
イリーナは勝利を確信する。ただ一つの誤算は未だにアレンが侯爵邸を訪ねて来ることだが、それ以外は全てが順調だった。
イリーナは勇気を出して相談を持ちかける。
「あの、ジーク。お願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「私ね、植物を育てたいんだけど、少しだけこの場所をかしてくれないかしら。少しでいいの! 一角とかでもいいから」
「何言ってるんですか、お嬢様」
手入れをしている庭を勝手にいじられたら誰だって嫌だろう。なのにジークの声は明るい。
「ここはお嬢様のお屋敷なんですから、僕に遠慮する必要なんてないですよ。植物、何を育てるんですか? 僕にも手伝わせて下さい」
「ジーク!」
なんて純粋で優しい子なのだろう。おかげで毒草を育てたいとは言い出しにくくなったけれど、植物に詳しいジークがいれば心強い。たとえゲームのイリーナには優しくなくても植物には優しい人だ。
ジークの参戦により、課題となっていた研究資金の調達にも光明が差す。タバサを通じて町の商業組合に所属したイリーナは薬草栽培の内職を始めた。練習のためにと魔法薬作りの内職も引き受け、順調に研究資金を稼いでいった。
こうして侯爵邸は幼女の手に落ちたのである。
多くの人々から協力を得たイリーナはいよいよ薬の生成にとり掛かる。まずは簡単な調合からと、肌荒れに効果のある薬や疲労回復の栄養ドリンクから試作を始めていった。やはりここでも材料をみじん切りにする正確な包丁さばき、何度不味い失敗作を食べても諦めない根性、調味料の配合で培った繊細な調合は大いに役立った。
そんな生活が数年も続けばイリーナは立派な引きこもり令嬢だ。毎年恒例の誕生日パーティーも六歳を境に開催されることはなくなった。パーティーで倒れたこともあり世間では身体が弱いと信じられ、いつしか幻の姫とまで言われるようになる。
(実際はただの引きこもりなのにね)
そしてイリーナは見事若返りの薬を完成させた。くしくもその日は学園入学の前日。しかし天はイリーナに味方したのである。
(勝った!)
イリーナは勝利を確信する。ただ一つの誤算は未だにアレンが侯爵邸を訪ねて来ることだが、それ以外は全てが順調だった。