【電子書籍化】悪役令嬢は破滅回避のため幼女になります!

「その髪飾り、良く似合っているね」

 目敏く指摘されたイリーナはたじろぐ。タバサが言った通り、本当にこの髪飾りには呪いがかけられているのかもしれない。
 イリーナは引きつる口元でなんとか笑顔を作った。タバサによって用意されたクッキーがどんなに美味しくても心が晴れることはない。

「君はクッキーが好きなのか?」

 手を止めることなく食べ続けているたので誤解されたらしい。特別好きというわけでもないが嫌いでもないお菓子だ。じっとしていると落ち着かないので手を動かしてしまう。なのに勘違いしたアレンは見当違いなことを言った。

「次はおすすめのお菓子を贈るよ」

 何故? というのは純粋な疑問だった。

「アレン様、私はもう誕生日のプレゼントをもらっています」

「誕生日のプレゼントが一つなんて誰が決めたんだ?」

「私は一つだけで嬉しいです」

「そう、喜んでもらえているんだね。良かった」

(どうしてそうなった!?)

 誘導のような会話に緊張して言葉を返せない。あとはただ、早くこの人が帰ってくれることを願うのみと、無心になってクッキーをかじり続けた。

「その髪飾りはお守りにもなるらしい。それが君の身を守ってくれることを願っているよ」

(嘘! この髪飾り多分呪われてます!)

 だが相手にしては負けである。こうして大人しくしていればアレンも諦めて帰るはずだと、イリーナは紅茶を飲みながら無言を貫いた。
 あれこれと話題を変えて居座るアレンも、お菓子が尽きる頃にはようやく席を立ってくれる。

「それじゃあイリーナ。またね」

「また?」

(またって言った?)

 髪飾りを忘れるなという脅しだろうか。抜き打ちチェックのお知らせである。
 イリーナは去りゆく背中を睨み付けるも特に効果はなく、アレンは優雅な足取りで帰路に着いた。