本気のタバサによってイリーナはパーティーに出席してもおかしくないほど完璧な装いへと磨き上げられた。王子の隣に立っても見劣りしないというのは仕上げた本人からの感想で、とても満足そうである。
誕生日から数日が過ぎた中庭の庭園は新しい蕾を付け始めている。これからは庭になら出てみるのも悪くないかもしれない。そんなことを思いながらイリーナは外の空気を満喫していた。
一人になりたいからとタバサの付き添いを断り、バラのアーチを潜る。噴水を背景に見上げる侯爵邸は物語に出てくるお城のようだ。
(本当に私、ゲームの世界に転生したのね)
魔法はないけれど、平和な世界に生きていた頃が懐かしい。
(魔法がなくてもあの頃の私は幸せだった。でも今は、毎日が怖い)
魔法が使える世界。食べ物は美味しい。侯爵令嬢という身分。お姫様にも見劣りしない容姿。平凡だったあの頃からすれば夢のような人生だ。なのに怯えて引きこもるだけなんて悲しい。早く十七歳になってシナリオなんて過ぎ去ってしまえばいいのに。
「お嬢様!」
庭園を散策していたイリーナはタバサの呼びかけに振り返る。お茶の支度が出来たと声を掛けてくれたのだろう。
「ありがとう。今い――」
ところが振り向いた先に佇んでいたのはアレンだった。
「イリーナ」
「ひいっ!」
恐怖に顔を引きつらせ、飛び上がるほど驚いてしまうのも無理はない。どうしてそこにアレンがいるのか。疑問たっぷりの眼差しにアレンは答えた。
「君に会いに来たよ」
朗らかに言うアレンに目眩を覚えた。庭を歩き回っている姿を見られては体調が悪いとも言い訳出来ず、タバサによって支度されたティーセットを前にアレンとお茶をする羽目になってしまった。やはり迂闊に外に出るべきではなかったと後悔する。
誕生日から数日が過ぎた中庭の庭園は新しい蕾を付け始めている。これからは庭になら出てみるのも悪くないかもしれない。そんなことを思いながらイリーナは外の空気を満喫していた。
一人になりたいからとタバサの付き添いを断り、バラのアーチを潜る。噴水を背景に見上げる侯爵邸は物語に出てくるお城のようだ。
(本当に私、ゲームの世界に転生したのね)
魔法はないけれど、平和な世界に生きていた頃が懐かしい。
(魔法がなくてもあの頃の私は幸せだった。でも今は、毎日が怖い)
魔法が使える世界。食べ物は美味しい。侯爵令嬢という身分。お姫様にも見劣りしない容姿。平凡だったあの頃からすれば夢のような人生だ。なのに怯えて引きこもるだけなんて悲しい。早く十七歳になってシナリオなんて過ぎ去ってしまえばいいのに。
「お嬢様!」
庭園を散策していたイリーナはタバサの呼びかけに振り返る。お茶の支度が出来たと声を掛けてくれたのだろう。
「ありがとう。今い――」
ところが振り向いた先に佇んでいたのはアレンだった。
「イリーナ」
「ひいっ!」
恐怖に顔を引きつらせ、飛び上がるほど驚いてしまうのも無理はない。どうしてそこにアレンがいるのか。疑問たっぷりの眼差しにアレンは答えた。
「君に会いに来たよ」
朗らかに言うアレンに目眩を覚えた。庭を歩き回っている姿を見られては体調が悪いとも言い訳出来ず、タバサによって支度されたティーセットを前にアレンとお茶をする羽目になってしまった。やはり迂闊に外に出るべきではなかったと後悔する。



